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エレイデル・アルバレス(コロンビア)VSジャン・パスカル(カナダ)
WBCシルバーL・ヘビー級タイトルマッチ(2017年6月3日)
(出典:WOWOW)
アルバレスは22戦全勝11KO、33歳。WBC1位にランクしています。ただこのクラスとしては、ちょっとKO率が低いのが気になりますね。
パスカルは37戦31勝18KO4敗1分け1NC。
セルゲイ・コバレフと2度戦い、全く歯が立たなかった選手です。
ほぼ世界戦線から離脱した感じですが、この試合に勝てばWBC王者のアドニス・スティーブンソンに挑戦する権利が得られます。
パスカルにとってこれが最後のチャンスとなりそうです。
フィジカルもスピードもアルバレスが圧倒
リング上で対峙した二人。アルバレスが一回り大きく見えます。
しかも、アルバレスの左ジャブはかなりスピードがありますね。
様子を見ながら、バックスステップでアルバレスの攻勢を捌いていたパスカルですが、2ラウンドに早くもつかまります。
アルバレスのワンツーの右ストレートが、パスカルの顎をとらえました。これは少し効きましたね。
(このパンチのダメージを中盤まで引きずっていたような気がします)
しかし、ここからのアルバレスの追撃が少し中途半端で、パスカルのうまさにごまかされた感じがします。
パスカルは右カウンター狙い
少しダメージの残るパスカルは、アルバレスのワンツー攻撃に対して、右ストレートのカンターを狙います。
アルバレスは左ジャブも速く、右ストレートはかなり威力がありそうですが、どうも攻めが単調で、攻撃に幅がありません。
パスカルはペースを握られながらも、アルバレスの攻撃パターンは読んでいたようです。
時折放つ右のカウンターも結構タイミングはあっていました。
アルバレスはチキンハート?
スピードもパワーもパスカルを圧倒しながら、パスカルの右カウンターを警戒しすぎて、左ジャブはスムーズに出るものの、踏み込んで打つ右が減ってきました。
パンチを放ってもすぐにバックステップして、パスカルのパンチの届かない距離をキープします。
これだけの破壊力がありながら、KO率が50%というのも頷けます。
危険なクロスファイトは極力避けて、自分のパンチが当たる距離を保つことをとても大事にします。
解説の西岡利晃さんは「この警戒心がアルバレスの強み」と言ってましたが、確かに負けないボクシングかもしれませんが、面白味は半減しますね。
しかも攻撃パターンが直線的で単調ですから、後半になるとカウンターの餌食になる可能性は高いと思います。
9ラウンドの右アッパー
右ストレートを読まれて、パスカルがまともに喰わなくなった9ラウンドに、アルバレスがアッパーをヒットしました。
(この想定外のアッパーにはパスカルも慌てたでしょうね)
ここから畳みかければダウンを奪えたと思いますが、パスカルの必死の反撃に合い、アルバレスは決して無理をしませんでした。
結局、アッパーを放ったのはこの回だけで、あとはワンパターンのワンツー攻撃に終始します。アッパーはやはりリスクのあるパンチだということでしょうね。
10ラウンドにはこの攻撃パターンを読まれて、パスカルの右カウンターをあびる始末。
(せっかくのパスカルのカウンターですが、きれいにナックルが返らずダメージはそれほどありません)
後半はパスカルの老獪なボクシングにごまかされ、終了のゴングを聞きました。
序盤の攻防を見ていると、早い回にKOシーンが見られそうな気がしましたが、まさか12ラウンドのゴングを聞くとは思いませんでした。
それと判定が2-0(114-114、117-111、116-112)と意外と競っていたのも驚きました。いくら何でも114-114はないでしょう。
アルバレスは、速い左ジャブを持ち、パワフルな攻撃力もあり、素質はかなり高いと思いますが、パスカルにこれほどてこずるようでは、アドニス・スティーブンソンの左の餌食になりそうな気がします。