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10ポイントマストシステム
テレビの実況アナウンサーやボクシング解説者のほとんどの人が、この採点ルールを間違って理解しています。
つまり、「テンポイントマストシステムでは、各ラウンドごとに、必ずどちらかに優劣をつけなければいけない」と思っているようです。
ようは、10-10はダメで、10-9や10-8などにしなければならないと思っているということです。
残念ですがこれは間違いです!
昔は5点法
古いボクシングファンならご存知だと思いますが、昔は5点満点で「郡司さんの採点表(懐かしい!)では今のラウンド、5-5でイーブンです」なんて実況アナウンサーが言ってましたよね。
満点が5点で一方が優勢だと5-4、ダウン一回で5-3、2回で5-2は、今の10点法と基本的な考え方はなにも変わっていません。どちらかに必ず5点をつけなければいけません。
要するに5ポイントマストシステムです。
このころは僅差の優勢では、5-5をつけるのが普通でした。ラウンドごとにポイントを計算しながら戦う必要はなく、試合全体で優勢であれば、判定勝利を得ることができましたし、見ている観客もわかりやすい採点だったと思います。
ラウンドごとに優劣
モハメッド・アリが全盛のころ、ラウンドごとに○×をつけ、とったラウンドで勝敗を決める、という試合を見たことがあります。
おそらく、アメリカのどこかの州のローカルルールだったと思いますが、これはダウンを奪おうが、わずかな差(僅差)でもどちらかが○で一方は×しかつかないんです。
これには私はかなり驚きましたし、抵抗がありました。
試合全体での印象とまったくかけ離れた判定が下される危険性がありますからね。
ルールが改正され、10点法になってからも基本的には5点満点の方法と大きな違いはありませんでした。
特に日本では10-10のラウンドが普通にあり、明らかに差のあるラウンドは10-9、ダウンによるマイナスポイントも同じでした。
テンポイントマストシステムとは
つまりテンポイントマストシステムは「絶対にどちらかに10点をつけなければいけない」ということだけです。
たとえば、明らかに不利な方の選手が、ラウンド終了間際に相手選手からダウンを奪っても9-8にはならないということです。
この場合は10-8か、もしくは10-9です。
要するに、どちらか一方には必ず10点をつける(反則による減点は別です)、というのが「ten point must system」です。
従って、どっちもだめだから、9-9なんていうのはだめなのです。この場合は10-10となるでしょうね。
つまり10-10はルール違反ではないのですよ。
どちらかに優劣をつける、というのは、ジャッジに推奨されている「世界的傾向」でしかありません。
世界的傾向に疑問
私は個人的にこの世界的傾向は賛成していません。
ボクシング評論家のジョー小泉さんは10-10をつけると、採点基準をしっかり理解していない素人みたいに思っている嫌いがありますね。(一方で、必ず優劣をつけることには疑問を抱いているようです。ジレンマですね)
しっかり目を開けて試合をみていたのか?
有効打の数はどちらが多いのか、有効な攻撃(クリーンヒット)は、リングジェネラルシップ(試合運びのうまさ、主導権支配)や勝つ姿勢(アグレッシブさ)は、ディフェンス力は。
これらを勘案すると、必ず優劣がつくというのが、世界的傾向ですが、果たしてそれでいいのでしょうか。
じゃあジャッジがみんな同じ採点をするかというと、見事にばらばらです。3人のジャッジが一致しているラウンドの方がむしろ少ないですね。
ジョー小泉さんが「このラウンドはジャッジによって採点が割れるでしょうね」とよく言っています。でも割れないと思っているラウンドもバラバラで、こうなると採点基準なんて、あってないようなもんです。
誰が見てもこのラウンドは10-9という場合だけに差をつければ、素人にもよくわかって、判定が下されても文句が出ないように思います。
私は、ボクシングはKOだと思っていますから、極端にいうと判定は引き分けでもいいと思っているぐらいです。ポイントを各ラウンドきっちり拾っていくボクシングが面白いとはどうしても思えません。
私は50年ボクシングを見てきた素人好みのファンです。