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サダム・アリ(アメリカ)VSジェシー・バルガス(メキシコ)
WBO世界ウェルター級王座決定戦(2016年3月5日)
(出典:WOWOW)
無敗(20勝13KO)のホープ、サダム・アリ(27歳)と、2階級制覇を狙うジェシー・バルガス(26歳)の対戦。
試合前の予想でアリが断然有利となっていますが、バルガスの唯一の1敗(26勝9KO1敗)はあのティモシー・ブラッドリーに惜敗したもの。KO率は低いですが、たたき上げの強さを持っています。
序盤は大方の予想通りアリの速いワンツーで試合のペースを握ります。
(スピードもテクニックもアリが一枚上)
しかし、バルガスもしつこいボクシングでアリにプレッシャーをかけ、4~5ラウンドは一進一退の攻防。アリのうち終わりを狙うバルガスのパンチもヒットし出します。
アリは身体能力の高さはあるものの、ボクシングが硬く、パンチに力みが感じられます。見た目ほどパンチにキレはないのかもしれません。一方のバルガスはKO率が示す通り、パンチにパワーは感じられませんが、柔らかい自然体のボクシングで対抗します。
余裕のなくなるアリ
6ラウンドあたりから、打ち終わりを狙うバルガスのパンチを不用意にもらう場面が増えてきます。また、5㎝背の高いバルガスのプレッシャーに押され、ペースがバルガスに傾きだしたように見えました。
アリの顔に余裕がなくなり、焦りすら感じられます。
解説の浜田剛史さんは「バルガスはアリのタイミングを読んできましたね」
でも、試合結果を知らなかった私はまだこの時点で「両者とも今一つ決め手に欠くから、どうやらこれは判定決着かな」と思っていました。
やはり打たれて弱かったアリ
7ラウンドあたりから、バルガスのワンツーのタイミングが合いだしました。
そして8ラウンド終盤、そのバルガスのワンツーが見事にさく裂。まさかバルガスが倒すとは思いもよらなかったので、びっくりしました。
ガードが下がり気味になり、動きが鈍くなったアリは、バルガスの長い右ストレートをまともにもらってしまいました。
(左ジャブも右ストレートも距離、タイミングがばっちり)
浜田さんが「アリは少し体が硬いところがある」と試合前に指摘していた通り、やはり打たれるともろい弱点が露呈しました。
9ラウンドも全く同じワンツーでバルガスがダウンを追加しました。
辛うじて立ってきましたが、まだ1分以上ありますし、アリは相当のダメージを被っています。
レフリーはもう止めるタイミングを計って、アリの顔しか見ていません。そしてまたも右ストレートをヒットさせると、すかさずレフリーが割って入りました。
(全く同じパンチで2度目のダウン)
負けたサダム・アリはホルヘ・リナレスと同じ欠点を持っているような気がします。
もう少し力みのないボクシングができるようになれば、再浮上のチャンスは「アリ」と思います。
ウェルター級はキース・サーマン、ダニー・ガルシア、ケル・ブルック、ティモシー・ブラッドリーとスター選手ぞろい。この中ではバルガスのボクシングスタイルは異色ですね。
でも、意外とやるかもしれませんよ。