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■WOWOWエキサイトマッチ観戦記・25
ウェルター級12回戦
ダニー・ガルシアVSレイモンド・ピーターソン(2015年5月25日放送)
両者とも世界チャンピオンです。
ガルシアはWBC、WBA世界Sライト級チャンピオン、ピーターソンはIBFの世界Sライト級チャンピオンで、しかも、それぞれなかなかの強豪です。
この試合、なぜか統一戦ではなく、ノンタイトルで1階級上のウェルター級12回戦で行われます。
ノンタイトルとはいえこの組み合わせは、本来なら結構ビッグマッチです。
でもなんだかかみ合わないような気がしますね。
■さえないガルシア
ガルシアといえば、アミール・カーンをKOで粉砕し、その後も強敵を連破してスーパースター候補に名乗りを上げていたのに、不思議と最近パッとしません。
ピーターソンは確かに難敵ですが、ガルシアは完全に攻めあぐねていました。
ジャッジは、前半はガルシアにポイントを与えていますが、ほとんどクリーンヒットもなく、微妙なラウンドの連続で、明らかに優位と思えるラウンドは1つか2つです。
ガルシアは本来カウンターパンチャーなので、相手にアウトボクシングされるとパンチ力も攻撃力も半減しますね。
カーンをワンパンチで倒したので、強打者のイメージがあり、ジョー小泉さんもパンチ力があると思っているようですが、私はガルシアのKO率からも、それほどの強打者とは思っていません。むしろタイミングで倒す技巧派ボクサーですよ。
■ピーターソンが猛然と追い上げる
8ラウンドぐらいから、アウトボクシングをしていたピーターソンが珍しくプレッシャーをかけて攻勢に出ました。
前半のビハインドを取り戻そうと結構ラフに攻めはじめて、ガルシアは防御するので精いっぱいの体たらくです。特に最後の2ラウンドはタジタジでしたね。
クリーンヒットは許さないものの、後半は完全にピーターソンンがペースを握っていました。
私は、ピーターソンが勝ったと思いましたが、前半の微妙なラウンドを拾ったガルシアがマジョリティデシジョン(2-0)で小差の判定勝ちを収めました。
いずれにしても、クリーンヒットもスリリングなパンチの交錯もなく、まったくもって退屈な試合でした。
これではガルシアがパウンド・フォー・パウンドに登場しないのも納得です。
■Sライト級の王座が「がら空き」
どうやらガルシアは階級を上げることを考えているようです。
ウェルター級で彼のパンチが通用するとは思えないので、完全に技巧派ボクサーに徹することになりそうで、そうなると魅力は半減ですね。
そして気の毒なのは、この試合に負けたピーターソンです。IBFのタイトルを剥奪されるようです。でも、試合後半に見せたようなアグレッシブなボクシングをもっと展開すれば、ガルシアより人気が出るかもしれません。実力はガルシアより上だと思います。
とにかく、結果としてWBCとIBFのSライト級王座が空位になりますね。
WBOも空位ですので、残るはWBAの正規チャンピオン、ジェシー・バルガスだけ。
3つの団体の王座が空位、まさに「がら空き」状態になりそうです。
残念なのはこの階級に有望な日本人がいないことです。
小原佳太がWBCとWBOの世界ランクに入っていますが、世界の器ではないですね。むしろ、日本チャンピオンの岡田博喜の方が将来性を感じますが、まずは小原を倒してからの話です。