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197.慎重な切り裂きジャック
(出典:WOWOW)
WBC世界Sミドル級タイトルマッチ(2015年9月12日)
バドウ・ジャック(スウェーデン)VSジョージ・グローブス(イギリス)
(出典:WOWOW)
■グローブスが勝つと思いましたが
ジャックは2015年5月にアンソニー・ディレルから不利の下馬評を覆し、判定でタイトルを手にしていますが、その前の試合で、無名のデレック・エドワーズにまさかの初回KO負けを喫しています。(エドワーズは現在WBC20位)
フロイド・メイウェザーの秘蔵子ということもあってか、世界戦のチャンスを手にしましたが、普通ならこんなに早く世界のチャンスは巡ってこないでしょう。
一方のグローブスは2敗しいていますが、いずれもカール・フロッチに喫したもので、これは相手が悪かった、という評価です。
たしか2戦目では1ラウンドにフロッチから痛烈なダウンを奪い、私は「これで決まったかも」と思ったほどのダメージに見えました。
負けても評価が下がらず、その強打を逆にアピールした試合だったように思います。
■まさかの右クロス
ジャックは、浜田剛史さん曰く「慎重な選手」で、フォームが良く、完成されたボクサーで、別名?「切り裂きジャック」とは全く違うイメージです。
1ラウンドは予想通り、グローブスが前に出て、ジャックがそれを捌くという展開でスタートしました。
そして2分過ぎ、王者の右ストレートがきれいにヒットし、そのあとの右打ちおろしのクロスでグローブスからダウンを奪いました。
これは見た目以上にダメージが深かったようで、最後まで尾を引いた感じがありました。フロッチ戦とは逆のスタート切ってしましましたね。
(出典:WOWOW)(切り裂きジャックの、この右クロスがすべてでした)
■ジャックの方が距離を詰める
3ラウンドから、飯田さんは「ジャックは自分の距離を作りましたね」という通り、距離をとってきれいなワンツーを決めていました。
そして、グローブスの戦力を見きったジャックが、5ラウンドから少し距離を縮めてきました。
グローブスも力強いパンチを打つようになってきましたが、どうしてもディフェンスが甘くなって、ジャックの少しずつ力を込めて打つようになったパンチをもらってしまいます。
時折グローブスが強いパンチをヒットするものの、ペースは完全にジャックが握っており、冷静に対処されて明確なポイントを奪うことができません。
後半からからは、ジャックのボディブローでさらにグローブスは苦境に立たされます。
■最後まで戻らず
結局、初回のダウンが最後まで影響し、グローブスは本来のボクシングを取り戻せずに12ラウンド終了のゴングを聞きました。
公式ジャッジは2-1と割れましたが、私は3人目のジャッジの116-111を支持します。ジャックが明確に勝っていたと思います。
ジャックはいいワンツーを打ちますし、オーソドックスな構えは力みがなく、バランスのいいフォームです。
さすが「メイウェザーの秘蔵子」と言いたいところですが、1ラウンドにたまたまいいパンチが決まったものの、全体的にはこれといった決めたがない、小さくまとまったボクサーという印象の方が強いですね。
ジャックは、明日には忘れそうな、簡単にいうと地味な選手です。
再戦すればパンチ力に優るグローブスが勝ちそうな気がします。