伝説の男、浪速のジョーこと辰吉丈一郎の天才的な強さ(前編)

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目次

◆希代の天才ボクサー

 

辰吉丈一郎さんはトップに登場するほど、凄い戦歴を残した選手ではないとは思っています。でも、彼の試合はとにかく面白かったし、はらはらして見ていてとても疲れましたが、本当にエキサイティングでしたね。
彼はバンタム級にこだわり、デビューから最後までバンタム級を通しました。最近ではとても珍しい事だと思います。

たしかデビュー4戦目で、日本チャンピオンで当時世界を目指していた岡部繁に挑戦しました。もちろん勝つとは思いましたが、相手もそれなりの日本王者ですから、簡単には勝たしてもらえないだろう、ぐらいは予想していました。

ところが、1ラウンドから圧倒し、王者にまったくボクシングをさせず、一方的に、やりたいように自分のボクシングをし、4回KOで日本タイトルを、いとも簡単にものしてしまいました。(1990年9月)

(動画の2:20〜)

辰吉さんは天才です。才能だけなら過去のすべての日本人ボクサーをしのいでいると思います。スピード、テクニック、パンチ力、防御感、どれをとっても一級品です。
たまに辰吉さんをテクニック無用のけんかファイターと勘違いしている方がいますが、彼はむしろテクニシャンです。日本人にしてはリーチも長く、左ボディブローなんかは一級品です。

 

◆ピークは早い

 

6戦目でベネズエラの世界ランカーに苦戦したとき、才能だけではここまでかな、と早くも彼のピークを予感してしまいました。ちょっと早すぎるかもしれませんが、彼は才能だけでボクシングをしていたように思います。

 

もっといいトレーナーに恵まれて、彼の計り知れない才能をもっと伸ばすことができたら、もっと、と、今でも悔やまれますね。

 

幸運にも、8戦目で弱い世界チャンピオン(グレグ・リチャードソン)に恵まれて、世界タイトルをものすることができましたが、本当にここが彼の頂点でした。(1991年9月)

 

このあとは、反乱万丈でしたね。
網膜裂孔や網膜剥離といった目の疾患が、彼のディフェンス能力を半減させたように思います。今まで間一髪でかわせたパンチをもらうようになったんだと思います。

 

もう後は不本意なボクシングの連続です。

 

▼「浪速のジョー辰吉丈一郎(後編)」に続く

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