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アルツール・ベテルビエフ(ロシア)VSエンリコ・コーリング(ドイツ)
IBF世界ライトヘビー級王座決定戦(2017年11月11日)
(出典:WOWOW)
ベテルビエフは11戦全勝11KO、32歳。
2年前に初めてWOWOWで見たときから、ずっと気になっていた選手です。
コーリングは24戦23勝6KO1敗、27歳。
アマ、プロ通じてダウンが経験がないという、鉄壁のディフェンスとタフさが売り物です。
しかし、6KOとはお粗末ですね。
ベテルビエフにかかれば、5ラウンド以内に初めてキャンバスに沈むことになると思います。
別人のように慎重なベテルビエフ
2年前に見たときは、「豪快さ」しか印象にありません。
たしかに、冷静沈着なボクサーではありましたが、ここまで慎重なボクシングをするとは思ってもいませんでした。
毎ラウンド、判で押したようなボクシングが展開されます。
ベテルビエフが左ジャブを突き、プレッシャーをかけコーリングをロープに詰めます。
しかし、ここから一気に畳みかけることはありません。
コツコツとコーリングの堅いガードの上からパンチをヒットし、決して強引に攻めません。
コーリングは時折、ベテルビエフに左ボディを返すぐらいで、大きなパンチはすべてベテルビエフに読まれています。
回を追うごとに会場のブーイングは大きくなります。
しかし、ベテルビエフは意に介さずマイペースを貫きます。
もう勝敗の行方は明らかです。いつ倒してもおかしくない展開です。
終盤にようやくベテルビエフが動く
9ラウンドにやや休んだ感じのベテルビエフが、10ラウンドから少し強いパンチを打ちだします。
貝のようにガードを堅めて守りに徹していたコーリングも、さすがに苦しくなってきました。
11ラウンドにベテルビエフのショートの右でコーリングの顎が上がりました。
(軽く打ったパンチですが、コーリングの顎が上がります)
さすがにチャンスとみたベテルビエフが攻勢をかけますが、まだコーリングに余力があると判断したのか、一気にはいきません。
試合は、まさかの最終ラウンドまで来ました。
ベテルビエフの執拗なボディ攻撃で、さすがのコーリングも気持ちが折れかけています。
そして一気にベテルビエフがロープに詰めて連打すると、コーリングは座りこむようにしてダウン。
(完全にガソリン切れ状態でコーリングがダウン)
もう、精も根も尽き果てたような感じでしたが、それでも立ってきます。
残り時間はもう1分を切りました。
ベテルビエフは強引に倒しに行きます。
そして、ガードの上から右フックをたたきつけ、なぎ倒すようにダウンを奪いました。
(完全にガードの上からのパンチでした)
もう、気持ちが完全に折れたコーリングを見て、レフリーがすぐにストップしました。
ベテルビエフは、ワシル・ロマチェンコのボクシングを研究したのでしょうか。
コーリングは途中棄権こそしませんでしたが、パンチのダメージで倒したというより、相手の心を折ってギブアップさせた勝ち方でした。
あれだけのブーイングの嵐の中、マイペースを貫いたベテルビエフの冷静さは恐れ入りますが、もう少しプロ意識を持たないと、せっかくの強打が泣きますよ。