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ホルヘ・リナレス(ベネズエラ)VSアンソニー・クロラ(イギリス)
WBA・WBCライト級王座統一戦(2016年9月24日)
(出典:WOWOW)
リナレスにとってはこの日の最大の敵は、マンチェスターの大観衆かもしれません。ざっと見た感じ、3万人ぐらい入っている感じがします。まあ、2万人は下らないでしょう。
リナレスが紹介された時の大ブーイングは、前回経験済みで、まあそれほど影響はないでしょうが、当たってもいないクロラのパンチが、大観衆の声援でクリーンヒットになるのはかなりハンデです。
これは、タイでの試合に似てますね。
リナレスは、現在WBCの休養王者扱です。
43戦40勝27KO3敗、31歳。17歳でデビューしてますから、もうキャリア14年になるのですね。
クロラは、38戦31勝13KO4敗3分け、29歳。
とにかくパワフルで、プレッシャーをかけて前に出てくる体幹の強さが最大の武器です。
予想以上に強いクロラのプレッシャー
クロラは胸板が厚く、リナレスより一回り大きく見えます。
ガードが堅く、パンチがコンパクトでなかなかカウンターを打ち難いボクサーです。
浜田さんが「ガードの隙間を打つこと」と試合前のアドバイス。
しかし、これがなかなか大変です。
序盤はクロラのプレッシャーを速いジャブと上下のコンビネーションでさばいていましたが、徐々にクロラのパワーに押されがちになります。
得意のボディブローが、何度もローブローの注意をうけたのも、苦戦の原因でしょう。クロラは間違いなくボディブローを嫌がっていましたから。
(確かに低いパンチもありましたが、クロラがボディを嫌がっていたのも事実です)
逆にリナレスは少し集中力を欠いたのか、不要にクロラのパンチをもらうシーンもありました。
(クロラのプレッシャーでロープに詰まるシーンが多くなる)
クリーンヒットの差が明暗を分ける
6ラウンドのリナレスの右のパンチは、明らかにダメージを与えました。しかし、追撃を許さないのが、クロラのしぶといところです。
しかも、どうやらこの回にリナレスは右手を痛めたようです。
(この右がこの日の一番のビッグパンチ)
右手の負傷の影響か、7~8回はリナレスの手数が減り、クロラのプレッシャーと手数に根負けしたように見えました。
この時点で、私の採点ではほぼイーブン。LIVEで見ていたら、「負けたかな~」て思ったでしょうね。
どうしても大観衆に後押しされて、前に出てとにかくパンチを打つクロラが、ロープに詰まりながらパンチを返すリナレスより、優勢に見えてしまいます。
しかし、リナレスは速い左ジャブと軽いパンチのコンビネーションで、試合の主導権を取り返します。
終盤の2ラウンドは、さすがのクロラも前に出る力、パンチのパワーが落ち、リナレスのうまいボクシングでポイントを奪ったように見えました。ガードの隙間を打つ左アッパーは秀逸でした。
アグレッシブと手数ならクロラですが、クリーンヒットなら断然リナレスです。
クロラのパンチはほとんどガードの上からで、しかも手打ちで体幹パワーほど威力はありません。前に出るパワーと堅いガード以外何もない、面白味に欠けるボクサーです。
褒めるとしたら、打たれたら必ず打ち返すしぶとさですね。
でも、こういうタイプは最近のアメリカでは、結構ジャッジに評価されますね。
ジャッジは3人とも、(115-114、117-111、115-113)で、リナレスのクリーンヒットを支持しましたが、アメリカだと逆転していたかもしれません。
次はデヤン・ズタティカニンです。こいつは厄介ですよ。