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(出典:WOWOW)
S・フライ級12回戦(2022年3月5日)
ローマン・ゴンサレス(ベネズエラ)VSフリオ・セサール・マルチネス(メキシコ)
S・フライ級に上げてから、すっかり影が薄くなったロマゴン(日本ではこの愛称で呼ばれていますが、本来のニックネームは「チョコラティ―ト」です)にとって、フランシスコ・エストラーダにリベンジすることが、生き残りを賭けた必須条件でした。しかし、コロナの影響で、結局、1階級下の世界王者と対戦することになりました。
「わしボク」としては、こちらのカードの方が新鮮味があって、面白いと思っています。ただ、怪しからんのは、マルチネスが下の階級のくせに、体重オーバーをやらかし、計量後も全く体重を落とす努力もすることなく試合に臨んだことです。世界戦でもないため、フィジカルで負けないためにわざとオーバーしたようにすら感じられますね。
両選手のプロフィール
ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)WBA世界S・フライ級1位
53戦50勝41KO3敗、34歳 右オーソドックススタイル
身長 160cm リーチ 163cm
フライ級まではその強打と、止まらない連打で、PFP(パウンド・フォー・パウンド)でもトップに君臨したロマゴンですが、その評価を一気に下げたのが、シーサケット・ソー・ルンブィンサイに連敗しことですね。しかも2戦目は何と4RKO負けという、まさに完敗でした。そして、2021年3月に、フランシスコ・エストラーダとの再戦で、2-1の判定で敗れています。
フリオ・セサール・マルチネス(メキシコ)WBC世界フライ級王者
21戦18勝14KO1敗2NC、27歳 右オーソドックススタイル
身長 157cm リーチ 160cm
この選手、なんとデビュー戦は負けているんですね。その後は順調に連勝し、2019年12月にクリストファー・ロサレスにTKO勝ちして、WBC世界フライ級タイトルを獲得しています。ロサレスといえば、2018年4月に体重オーバーした比嘉大吾に9RTKO勝ちして、WBC世界フライ級タイトルを獲得した選手です。
なお、マルチネスはその後、2020年2月に初防衛に成功しています。2年のブランクは、体重オーバーの要因になっているかもしれませんね。ちなみに、マルチネスはWBCタイトルを保持したままの対戦です。
試合経過)
序盤はマルチネスがスイッチで応戦
体格はほぼ同じですね。ロマゴンはこのクラスだとどうしても、フィジカル面で劣るので、そこがネックになっていましたが、マルチネス相手だとそのマイナス面は回避できるかもしれません。それにしてもマルチネスは、下のクラスの選手とは思えないほど、上半身の厚みはロマゴンに負けていません。マルチネスに減量失敗の影響は見られません。手数ではロマゴンを上回るほどです。
先に手を出すのは、マルチネスで、ロマゴンは前に出るものの、いつもほどしつこい攻勢を見せません。マルチネスは左右にスイッチしながら、多彩なパンチを放ちます。しかし、ロマゴンはあまり戸惑いを見せず、ガードを固めて、的確なパンチをヒットしています。3ラウンド後半から、ロマゴンのプレッシャーが強くなってきましたね。
4ラウンドあたりからロマゴンがペースを握る
ロマゴンが相手の戦力を見切ったのか、上下にパンチを打ち分け、コンビネーションブローで、マルチネスを圧倒し始めます。マルチネスも大振りのパンチで必死で応戦しますが、的確性に欠けます。ただマルチネスのパンチはなかなか力強いですね。6ラウンドは完全にロマゴンのペースなってきました。そして、ラウンド終盤のロマゴンのアッパーでマルチネスがぐらつきます。
ちなみに、6ランド終了時点で、マルチネスがコーナーで「疲れた」と言ったそうですね。
後半はワンサイド
ロマゴンのボディ攻撃が有効にヒットし、マルチネスのスタミナをそぎ落としていきます。マルチネスも必死で反撃しますが、ほとんどのパンチがガードの上で、しかも威力もなくなってきています。ロマゴンのプレッシャーが強くなり、マルチネスは下がる一方です。8ラウンドに、マルチネスが右腕を振る仕草をしました。痛めたのかな。ロマゴンはマイペースで上下にコツコツとパンチを集めます。
諦めないマルチネス
9ラウンドにマルチネスが、反撃に転じます。まだまだ諦めていません。少しロマゴンも疲れてきたのかな。でも、スローで見ると、やはりパンチの的確性では、ロマゴンが上ですね。10ラウンドはまた、ロマゴンがプレスを強めてきました。マルチネスは防戦一方になります。しかし、これだけパンチをヒットさせても倒せないのは、やはりロマゴンのパンチの威力が落ちているのでしょうね。
判定は3-0(118-110,117-111,116-112)でロマゴンの判定勝ちです。116-112のジャッジは、マルチネスの大振りのパンチに惑わされたのでしょうね。眼科に行った方がいいと思います。
全盛期のロマゴンの強さを見てきた「わしボク」としては、物足りない試合でしたね。やはりS・フライ級では本来のパフォーマンスは無理だと思います。